別居や離婚を考えているけれど、子どもの教育費のことが心配で踏み切れない。そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。私立学校の学費や塾代、将来の大学費用など、一人で負担するには重すぎる教育費。でも実は、別居後でもきちんと確保する方法があります。養育費の仕組みを正しく理解し、学資保険を上手に活用すれば、子どもの学びを諦める必要はありません。この記事では、別居後の教育費確保について、具体的で実践的な方法をお伝えします。
別居後の教育費の基本的な考え方
婚姻費用に含まれる教育費の範囲
別居中に受け取れる婚姻費用には、実は子どもの教育費も含まれています。ただし、この教育費は「標準的な教育費」と呼ばれるもので、公立の小中高等学校に通っていると想定した場合の費用です。
具体的には、公立学校の授業料や教科書代、文房具代、PTA会費、交通費などが含まれています。年間収入が761万円で公立高校の子が1人いる世帯では、公立高校の学校教育費相当額は年間25万9342円とされています。
しかし、この標準的な教育費には、私立学校や大学の費用、塾や予備校、習い事の費用は含まれていません。つまり、これらの費用については別途請求する必要があるということです。
公立学校と私立学校の扱いの違い
公立学校と私立学校では、教育費の扱いが大きく異なります。公立学校の費用は婚姻費用や養育費の算定表に既に含まれているため、追加で請求することはできません。
一方、私立学校の費用については、条件を満たせば追加で請求できます。私立学校の学費から公立学校でかかる費用を差し引いた上で、両親の収入割合に応じて負担額を決めることになります。
養育費・婚姻費用算定表の仕組み
現在の家庭裁判所では、「2019年12月改定版標準算定方式」という方法で婚姻費用や養育費を計算しています。この算定表は、双方の収入を基に、世帯収入から一般的に子どもにかかる費用を算出して、夫婦それぞれの収入から負担割合を決める仕組みです。
算定表で算出された金額には、公立学校に通う場合の標準的な教育費が含まれています。しかし、実際にかかる教育費がこの標準を超える場合は、別途協議や調停で決める必要があります。
別居中の教育費負担のルール
公立学校の学費は基本的に請求できない理由
公立学校の学費を追加で請求できない理由は、既に婚姻費用や養育費の算定表に含まれているためです。算定表は公立中学校・公立高校においてかかる費用で算出されているので、公立学校に通っている限り、追加の教育費負担を求めることは難しいのが現実です。
ただし、公立学校でも特別な費用(修学旅行費や部活動費など)については、場合によっては追加で請求できる可能性があります。これらの費用は標準的な教育費に含まれていない場合があるためです。
私立学校の学費を請求できるケース
私立学校の学費を請求できるケースは、主に2つあります。まず、子どもが私立学校に進学することを支払う側(義務者)が承諾している場合です。離婚時や別居時に既に子どもが私立学校に通っている場合も、義務者が承諾しているといえるケースが多いとされています。
もう一つは、義務者が承諾していなくても、親の学歴や収入、地位などから、私立学校への進学が不合理ではないといえる場合です。例えば、父親が大学卒業で、支払いができる程度の収入がある場合などが該当します。
夫の同意がある場合の負担割合
夫の同意がある場合の負担割合は、父母の収入に応じて決められます。東京高等裁判所令和2年10月2日決定では、婚姻費用に教育費を加算する場合、父母双方の収入の額に応じて按分する考え方が確認されました。
この決定では、父母の収入割合が7:1の場合、その比率に応じてそれぞれの負担額が定められました。つまり、収入の多い方がより多くの教育費を負担することになります。
私立学校の教育費を確保する具体的な方法
同居中に私立進学の同意を得ておく
私立学校の教育費を確実に確保するためには、同居中に私立進学の同意を得ておくことが重要です。家庭裁判所では、同居中から既に続けている塾や習い事、私立学校への通学がある場合、それら全てにつき、義務者に費用負担させている印象があります。
これは、子のそれまでの生活を変えることなく続けることが子の福祉に叶うと考える傾向にあるためです。月謝が払えなくなってそれまで続けていた習い事などを止めてしまう状況を極力避けようとしているのです。
書面や録音で証拠を残す方法
私立進学の同意を得た場合は、必ず書面や録音で証拠を残しておきましょう。口約束だけでは後で「そんなことは言っていない」と否定される可能性があります。
具体的には、私立学校への進学について話し合った内容をメールで送信し、相手からの返信を保存しておく方法があります。また、会話を録音する場合は、相手に録音の許可を得るか、法的に問題のない範囲で行うことが大切です。
婚姻後契約を活用した事前対策
婚姻後契約を活用することで、教育費に関する取り決めを事前に明確にしておくことができます。この契約では、子どもの教育方針や費用負担について具体的に定めることが可能です。
婚姻後契約は公正証書で作成することをおすすめします。公正証書にしておけば、後で強制執行の手続きも取りやすくなります。
学資保険を養育費の一部にする方法
学資保険を養育費代わりにするメリット
学資保険を養育費代わりにすることには、いくつかのメリットがあります。まず、子ども名義のお金として、ほかの資産と区別して確保しやすいという点です。預貯金のなかから子どもの教育費をやりくりしようとしても、ついマイホーム購入の頭金や家族旅行の費用などで使ってしまうケースがよくあります。
学資保険という教育費専用の箱で貯めていけば、確保しやすくなります。また、学資保険の保険料は生命保険料控除の対象になるので、節税にもつながります。
契約者と受取人の設定方法
学資保険を養育費の一部として活用する場合、契約者と受取人の設定が重要になります。一般的には、支払い義務のある親(多くの場合は父親)を契約者とし、子どもを受取人に設定します。
この設定により、万が一契約者に何かあった場合でも、保険料の支払いが免除され、保険金は受け取れるという保障があります。これは預貯金とは異なる大きなメリットです。
公正証書で取り決めを確実にする手順
学資保険を養育費の一部とする取り決めは、必ず公正証書で行いましょう。公正証書には強制執行認諾文言を付けることで、支払いが滞った場合に強制執行の手続きを取ることができます。
公正証書作成の手順は、まず当事者間で合意内容を決め、公証役場に予約を取ります。必要書類を準備し、公証人と面談して内容を確認した後、正式に公正証書を作成します。
高額な教育費に備える事前準備
教育資金贈与信託の活用
教育資金贈与信託は、祖父母等が孫・ひ孫等に一人につき金1,500万円まで非課税で教育資金を贈与できる制度です。この仕組みを活用すると、祖父母等の財産の中から金1,500万円を限度として孫等に信託財産を贈与した形になりますが、贈与税は課税されません。
孫等に贈与された資金については、教育資金としてしか使うことができません。このことは、教育資金にかかる領収書等を孫等が信託銀行等に提出して初めて金銭が交付される仕組みとして担保されます。
夫婦の財産から教育費を切り出す方法
夫婦の共有財産から教育費を切り出して確保する方法もあります。これは、離婚時の財産分与の際に、教育費として一定額を確保しておく方法です。
具体的には、不動産や預貯金などの財産分与の際に、子どもの教育費として必要な金額を計算し、その分を教育費専用の口座に分けて管理します。この方法により、将来の教育費を確実に確保できます。
ファイナンシャルプランナーとの相談活用
教育費の準備には専門的な知識が必要です。ファイナンシャルプランナーに相談することで、家計の状況に応じた最適な教育費準備方法を見つけることができます。
ファイナンシャルプランナーは、学資保険だけでなく、NISAなどの制度を活用した積立投資についてもアドバイスしてくれます。教育費のかかりにくい乳幼児期や小学生の間は、教育費の原資となる費用を捻出しやすいので、その期間の積立額を増やし、時間をかけて少しずつでも増やしていく戦略を立てることができます。
教育費の支払いが止まった時の対処法
履行勧告の手続き
教育費の支払いが止まった場合、まず履行勧告の手続きを行います。履行勧告は、家庭裁判所が支払い義務者に対して、取り決めた内容を履行するよう勧告する制度です。
履行勧告の申出は無料で行うことができ、書面または電話で家庭裁判所に申し出ます。ただし、履行勧告には強制力がないため、相手が応じない場合は他の手段を検討する必要があります。
強制執行による財産差し押さえ
履行勧告でも支払いが再開されない場合は、強制執行による財産差し押さえを検討します。これは、相手の給与や預貯金、不動産などの財産を差し押さえて、教育費を回収する手続きです。
強制執行を行うためには、公正証書や調停調書、審判書などの債務名義が必要です。また、相手の財産を特定する必要があるため、事前に財産調査を行うことが重要です。
公正証書がある場合の対応
公正証書に強制執行認諾文言が付いている場合は、比較的スムーズに強制執行の手続きを進めることができます。公正証書があれば、裁判を起こすことなく、直接強制執行の申立てを行うことが可能です。
ただし、強制執行を行う前に、相手の財産状況を把握しておくことが大切です。差し押さえる財産がなければ、強制執行を行っても回収できないためです。
2025年の民法改正による変化
法定養育費制度の導入
2025年に導入予定の法定養育費制度は、離婚の際に養育費の取り決めをしなくても、一定額の養育費を請求できるという制度です。この制度により、養育費の支払いがより確実になることが期待されています。
法定養育費の金額は、生活保護制度の生活扶助基準が参照される見通しです。子どもの最低限度の生活維持のための金額として、この基準を基本としつつ、子どもの教育費を考慮するかどうかなどについて、議論が進められています。
従来の取り決めとの違い
法定養育費制度では、支払う側の収入や個別事情に関係なく、一律に特定額が定められる見通しです。これは従来の算定表を用いた個別計算とは大きく異なる点です。
子どもが複数の場合は、子ども1人当たりの金額を単純に人数倍した金額となる見通しです。この仕組みにより、養育費の計算がより簡単になることが期待されています。
改正法施行前の離婚への影響
改正法施行前に離婚する場合でも、法定養育費制度の考え方を参考にすることができます。特に、教育費に関する取り決めを行う際には、将来の制度変更も考慮して、柔軟な条項を設けておくことが重要です。
また、改正法施行後に養育費の見直しを求めることも可能になる可能性があるため、その点も含めて取り決めを行うことをおすすめします。
教育費確保で失敗しないための注意点
よくある勘違いと正しい知識
教育費確保でよくある勘違いの一つは、「算定表で出た養育費や婚姻費用しか払わなくていい」という考えです。実際には、標準的な教育費を超える部分については、父母の収入に応じて負担する必要があります。
また、「私立学校の費用は全額請求できる」という勘違いもあります。私立学校の学費から公立学校でかかる費用は差し引いた上で、両親の収入割合から算出する必要があります。
専門家でも間違いやすいポイント
専門家でも間違いやすいポイントとして、婚姻費用と養育費の教育費加算方法の違いがあります。離婚後の養育費に加算する場合は、実際の教育費を父母の収入の割合で負担額を決めますが、別居中の婚姻費用の場合も、現在は父母双方の収入の額に応じて按分する考え方が確立されています。
また、大学進学費用については、奨学金の有無や子どものアルバイト収入なども考慮して分担額を決める必要があります。これらの事情を見落とすと、適切な負担額を算出できません。
無理な支払いを避ける方法
教育費の確保は重要ですが、無理な支払いを求めることは避けるべきです。支払い義務者の収入や資力を超えた請求は認められません。例えば、資力がないのに留学費用や私立医学部の学費を請求するなどは不合理とされます。
学資保険を活用する場合も、無理のない範囲で保険料を設定することが大切です。基本的に、学資保険は最初に決めた保険料を減らすことができないため、途中で支払いが困難になると元本割れのリスクがあります。
まとめ
別居後の教育費確保は、正しい知識と適切な準備があれば十分可能です。婚姻費用や養育費の仕組みを理解し、私立学校や塾の費用についても条件を満たせば請求できることを覚えておきましょう。学資保険を養育費の一部として活用し、公正証書で取り決めを確実にすることで、子どもの教育を守ることができます。2025年の法定養育費制度導入も踏まえ、専門家と相談しながら最適な方法を選択することが大切です。子どもの未来のために、諦めずに行動を起こしていきましょう。


コメント